日々早々エッセー
バックナンバー集（2021年 1-6月分）
2021年上期の各月バックナンバー： 1月 2月 ３月 4月 ５月 6月
＜＜2021年：1-6月分 タイトル＞＞
06/29 雨に映える花 06/25 パーキンソンの法則 06/18 単身赴任 06/11 ワクチン差別 06/04 自由のぶつかり合い 05/28
百日の説法 05/21 七割は海 05/14 ズルをすると 04/23 ビデオ判定 04/16 エポックメーキング 04/09 もつ煮込み 04/02
覆水門に戻らず 04/01 汀のさくら 03/26 うららかな 03/19 ファクターX 03/05 虫愛ずる姫君 02/26 ガイアの怒り
02/19 氷河期はくる 02/12 スーパーカーはいかが 02/10 建国記念の日 02/05 西洋崇拝 01/29 振袖火事 01/22
最大のリスク 01/15 マルクスの失敗 01/08 向かい風
2021年6月29日
雨に映える花
春のさくら、秋のもみじとともに日本の季節を彩る植物といえば、今の梅雨時はやはり紫陽花だろう。我が家の庭の回りにもいろいろな紫陽花が咲いているが、書斎の机にコップにいれた濃い青色の紫陽花を飾った。部屋に飾ってあるバラにも負けず実に華やかで、そうでありながら且つ、一面清楚な雰囲気を漂わせている。
そういえば永井荷風の短編「あぢさい」も、男たちに言い寄られるとついその情にほだされてしまい相手の男なりに合わせてしまい、その結果男たち次々に不幸にしてしまう新橋芸者の話だったが、まさに主人公は、七色に変わるという紫陽花のイメージにぴったりだったことを思い出した。そういえば紫陽花の葉には毒があるというからその点も美しい女性とちょっと共通点があるような気もするが―――。
ロンドンにいた時に、よく王立植物園であるキューガーデンにいったものだが、あそこは江戸時代に日本から持ち込んだという原種の紫陽花と、その株から作った数々の変種の紫陽花があって、日本と同じく雨季には咲き誇り日本の梅雨をおもいださせてくれたものだった。
シーボルトなどが日本から持ち出したといわれる紫陽花は、今やイギリスのみならずヨーロッパ各国やカナダや米国でもよくみるが、この花は珍しくその原産地が日本だという珍しい花だ。（アヤメやスミレもそうだと聞いたことがあるが）
雨に映える花として知られる紫陽花だが、一見花の様に見えているのは葉の変形したガク（鰐）であり、だからこそ雨にぬれても花を閉じず映えてみえるのだという。
さくら、もみじと共に人生の様々なシーンでの思い出の多い花である。
（06/28/21 9:00pm S.T. ）
2021年6月25日
パーキンソンの法則
東京オリンピック開催には、オリンピック組織委員会（橋本聖子委員長）やらJOC（日本オリンピック委員会 山下泰裕会長）、政府、東京都、財界などもろもろの組織が入り乱れてかかわり、この組織が輻輳していることに、当初は「オールジャパン体制で五輪の成功を目指す！」などと歓迎するコメントもみられたが、コロナ禍で情勢は一変し、どこの組織もできるだけコロナの責任はとりたくないが、いいとこどりはしたい――といったへっぴり腰で距離を置き始めた。
今や、東京オリンピックは「船頭多くして舟、山に登る」というよりは、「船頭無くして、舟、漂流する」といった様相をていしてしまっているが、そんな中に、最初からエラーソーな顔をしていたオリンピック貴族利権集団のIOC（国際オリンピック委員会のバッハ（会長）やら、コーツ（委員長）たちが、「何が何でも開催しろ」だとか「ステークホールダーの利益も考慮しろ！」などとリモートで命令するものだから、日本人の大半がオリンピック関係者に反感さえ覚える事態になってしまった。
オリンピックグッズが売れなくて（当初見込みの1割も売れればよい方との情勢だが、）泣きっ面になっている業者やら、選手たちにとっては気の毒な話ではある。
第二次大戦が終わって、海軍の艦艇や軍人の数は大幅に減っているのに，海軍省の役人の数が大幅にふえている―――という事実などから導かれたのが英国の歴史学者パーキンソンが唱えたのが、「役人の数は仕事に無関係に一定の率で増加する」というパーキンソンの法則であるが、「落としたトーストは必ずバターを塗った面を下にして着地する」というユーモアあふれたあるあるを集めたマーフィーの法則と共通する皮肉な笑える法則だ。
そこで心配になるのは、東京オリンピック組織委員会という組織だ。組織委員会は4月末時点で、職員数が4000人、大会時には8000人の見通しというが、その2割ほどは都や国からの出向だというものの、大会終了後は、その大部分はいらなくなるはずなのだが――パーキンソンの法則を考えると、そうそう簡単には組織の縮小ができないのではないか―――と思わなくはない。
まさか、組織温存の為には――とオリンピックの2032まで再延期などという案を画策する輩が出てきはしないかと―――少し心配だ。
（06/24/21 9:00pm S.T. ）
2021年6月18日
単身赴任
巨人のスモーク内野手がコロナ禍のため家族のビザ取得が困難であることを理由に退団し米国に帰国するという。
かつて、妻の出産に立ち会いたいからとシーズン途中で一時帰国する外国人選手がいると聞いて、親が臨終の床にあっても舞台に穴をあけるわけにはいかないと舞台を務め上げた役者が美談として語られるそれまでの日本と比べ、彼我の家族観の違いに驚いたものだったが、ここにきてスモーク流の家族観も、日本人の中でもかなり浸透してきているようだ。
そんな家族観の移り変わりもあるのだから、日本でも単身赴任家庭は減ってきているのではないかと思ったが、今年3月の調査によると意外と90年代に比べて単身赴任家庭は、増えているのだとか。タカさんのケースなどを含めてかつての単身赴任は、子供の教育問題という理由が多かったが、最近の単身赴任の理由としては、夫婦共働きの増加と、（昔はそんなに多くはなかった）親の介護、というのが加わり、90年代に比べてその総数は、約1.5倍にもなっているという。
タカさんも結構、単身赴任経験はある。エジプトに赴任した時には、娘たちの教育環境を考えて家族を日本に残したし、その他の海外単身赴任も、やはり教育問題、あるいは親の病気などで家内が日本を離れられないといった事情があったからだが、アメリカでは企業の転勤命令で単身赴任をせざるを得なくなるといった場合、赴任を断ることもできるし、会社が人権問題で訴えられる場合もあるという。知る限りでは、アメリカでは、基本的には戦争中の軍隊でもない限り転勤、あるいは転職に当っては家族帯同が普通だという。
逆に、今の日本には、家族を母国に残して、単身赴任している外国人がかなりいる。特に外国人労働者の多くが家族を残し日本に所謂出稼ぎの形で来ている人も多い。単身赴任というわけではないが、ここ数十年は、独身で来日し日本人と結婚する外国人も多くなりその子息（ハーフ）がスポーツ界などで活躍している例も多く、国際化という面では、かつての日本とは随分様子が変わってきているようだ。
スモーク選手が家族と一刻も早く会いたいと思っていることは、十分理解できるが、かつて流行った「亭主元気で留守がいい」などというCMのフレーズが頭に浮かんできたこともあって――（二人の娘さんたちはともかく）彼の奥さんも一刻も早くスモーク選手と会いたいと思っているのだろうか――とチラッと考えてしまった。
（06/17/21 9:00pm S.T. ）
2021年6月11日
ワクチン差別
小さな公園にも必ずと言ってよいほどあった砂場だけれども、この頃は数が減ってしまったし、砂場があっても柵で囲まれていてそうそう気軽には入れないようになっているが、犬や猫といったペットが、入り込み糞をしては砂をかけて行く―――といったことが繰り返され、小さい子供達が砂遊びをするには不潔になり過ぎているし、頻繁に砂の入れ替えをするのには費用がかさむといった問題があるかららしいが、昔も砂場には、よく古釘やネジなどが落ちていてそれが原因で破傷風になるから気をつけろ等といわれたものだった。
確かに、昔の子供は、裸足で駆け回ることもあったし、よく古釘などのサビた金属がおちていたので、足の裏や足指を傷つけることがあった。そういった時に、親からよく言われていたのは「すぐに傷口を洗って消毒しないと破傷風になる」ということだったから、この歳になっても足にちょっとした傷ができると神経質すぎる位気にして消毒をすることが癖になっている。
実際は、タカさんの回りで破傷風になった人はいないのだけれど、子供の時の親の言葉と、昔見た破傷風にかかった子供と親子を描いた映画の、あまりの凄まじい症状の描写がトラウマになってしまっているところはある。
海外旅行に行くときに破傷風の予防接種が義務付けられている国は今でも多いようだ。特に医療事情がそんなに良くないと言われるアフリカや南米などに行く際は、万一破傷風になった場合、そんなに容易には結成治療を受けられない場合もあるから、万一に備えて予防接種を受けておいてよいとされているようだ。
60年代以降は、日本でも破傷風の予防接種が行われているので、むかしほどの発症例はないようだが、予防接種の効果がそんなに長くは続かないらしいから、念のために接種してから海外に出かけた方がよいらしい。
予防接種といえば、転勤で子供を帯同して、アメリカの小学校に転入させるには、どの州でも予防接種証明が必須になっている。日本で一時、三種混合ワクチン接種の反対運動があって何年間か学校での接種がなかった時代があった為、その時期の子供達がアメリカに行った場合、予防接種証明がなくて混乱したこともあったという。
今、世界では、コロナワクチンの接種が進んでいて、日本でも、おくればせとはいいながら今年11月までには、希望者全員に接種をおえるとの計画だ。イギリスなど接種が進んでいる国では、マスクなどの義務化も解除され、ワクチン接種者にはワクチンパスポートを発行して旅行も自由化されるとも聞く。
まさに、アメリカの小学校で要求される予防接種証明のようなものがこれからの海外旅行では世界中で必要とされるようになるのだろうか―――日本国内でも、11月までは、「一回だけ接種した人」、「第2回の接種も終わった人」「まだ一回も接種していない」という、なんとはなしのワクチン差別が行われるようなことになりはしないか―――とちょっと心配だ。
(06/10/21 10:00pm)
2021年6月4日
自由のぶつかり合い
民主主義国では何物にも代えがたい権利として「自由」が認められている。しかし「自由」の中にもいろいろなものがあって、その自由同士が相反する―――と言った場合もあるから、「自由」には「公序良俗に反しない限り」などという条件が付いており無制限に自由が守られているという訳でもない。
「個人の自由」も、他者の自由を束縛するものになってしまう場合には制限を受ける場合もあるのは、皆が社会の一員である以上は致し方ないことでもある。
例えば、憲法では、重要な自由として、思想信条の自由（第19条）と信教の自由（第20条）があげられている。個人が何を嫌おうが好こうが自由、どんな宗教を信仰しようが自由であると憲法は言っているのだ。
宗教が自由なのだから、ヒンドゥー教をはじめユダヤ教、キリスト教、イスラム教など多くの宗教が戒律で、同性愛を禁じている以上、信者が「同性愛」を非難することを禁じる訳にはいかない。信者にとっては、同性愛は「神の教えに背く行為」であり、そういうカップルを非難することは、ある意味では「神の教えに忠実で正しい行い」ということにもなるが―――一方非難された同性愛カップルにとっては「個人の自由の侵害」であり、今流行りの言葉でいえば「差別」ということにもなるだろう。
今国会では見送りとなるようだがLGBT法案に関して、もし上記で述べたような自由のぶつかり合いが起きた場合、一方的にいずれかを罰することが可能とも受け取れる部分がある。
今や、温暖化防止の為にという掛け声の下で、カーボン排出が悪だという世論が醸成され抗いようがなくなっているのと同様、LGBTが正義であってそれに抵抗を示す意見は、非難されるばかりというムードになりつつあるが―――ここは、しばらくお互いが頭を冷やしてみるべきいい時期なのではないかと思う。
（06/03/21 9:00pm S.T. ）
2021年5月28日
百日の説法
持病があるので定期的に病院を訪れていたのに、コロナによる外出自粛要請などもあって、この頃は、通院を控えている――という高齢者も多いと聞く。肩が凝ったからと言って暇つぶしに病院に行っていた人も、この頃は通院を控えるようになったりもして、民間の病院の中には経営が苦しいところも出てきているとも聞く。
1000人当たりの病床数は、日本の方が、欧米に比べて抜群に多い（英国や米国の3未満に比べて日本は13と約4倍強のベッド数を有する）というのに、欧米の数分の一のコロナ感染者数なのに、なぜ「医療逼迫」状態になるのか―――とも思うが、これは欧米の病院のほとんどが大規模病院であり公立の物が多いのにくらべ、日本の病院の8割が個人病院規模であり、小規模病院の多くは、コロナ患者を受け入れる設備、人員を欠いているかららしい。（コロナ患者を受け入れている病院、と聞いただけで他の病気の患者が寄り付かなくなる等という風評被害を怖れる病院もあるとか）
そんな訳で、町医者の中には暇をもてあまして、平日のゴルフ場に行く者もいて、ゴルフ場は、先生方が一杯だという噂だし、自民党の医師会推薦議員である自見英子参議院議員の資金集めパーティーには、コロナ対策について国や国民に対して厳しい行動自粛を呼びかけた日本医師会の中川俊男会長をはじめ多数の医師たちが駆け付け盛況だったというから、この人達にコロナ対策を語る資格があるのかと思ってしまう。
もっとも、日本医師会会長という肩書でいかにも日本の医師の代表と思われがちだが、日本医師会の代議員は、主に個人病院の経営者であり勤務医は会員の約半数を占めるのに代議員のわずか10％でしかなく、しかも日本の医師免許資格を持つ医者の約4割しか加盟していない。要するに（言い方は悪いが）開業医の集まりなのだ。
そうなると、どうしても医師会の関心は病院経営の権益、利権ということになりがちだから、圧力団体として自分達の利権代表議員の政治資金集めパーティーに参加して気勢をあげることの方が、大人数の飲み会は自粛するようにという国民の健康を守るための呼びかけを守るより大事―――ということになってしまうのかも――。
東京オリンピック開催中のボランティア医師を募集したところ、募集人員200人を上回る250人の応募があったというが、なぜ、一般へのワクチンの射ち手不足がさけばれているのだろう政府の緊急事態延長発表に、「医療体制のひっ迫を鑑みれば、多くの国民は度重なる延長に疲れ切っている。今回を最後と心得て、政府には改めて具体的な対応策を示してほしい」と要望したという。それだけを聞くと、まともなご意見にも聞こえるが、それが自粛を呼びかけながら、自らは自粛破りをしていた方からの発言となると―――高僧と言われる坊さんが、檀徒を集めて百日間、毎日ありがたい説法をしたが、百日目に大きな屁を一発やったために、それまで感心して聞いていた檀徒たちが皆「なぁ～んだ！」とあきれて散っていったという「百日の説法、屁ひとつ」の話が浮かんできてしまい――医師会そのものに対する国民の信頼も失われてしまったような気がする。
(05/27/21 10:00pm)
2021年5月21日
七割は海
人類として初めて宇宙から地球を見たガガーリンが「地球は青かった」といったように、地球表面の7割は海である。
残りの3割が陸地ということになるが、その約4割を人口の少ない森林が占めており砂漠も約3割に達するから、人口密集地である都市が地球表面積に占める割合は数％に過ぎないのではないだろうか。
中国の宇宙ロケットが周回軌道に入った後、徐々に落下し始め、大型のため途中で燃え尽きず、地球表面に落下したが、失敗したロケットだけに、いつどこに落ちるか事前の予測は困難であった。
中国の宇宙当局は、ロケットの軌道などの情報を公表していなかったため、落下の可能性のある地域の国々や、アメリカ、欧州などからは、中国のこの乱暴な宇宙計画を非難したが、当の中国は「地球の7割は海だから、人口密集地に落ちる可能性は少ない」と最後まで詳細な情報公開を拒んだ。
この迷えるロケット ‘stray rocket’は、結局10日にインド洋のモルディブ近くに落下したと中国当局が発表したが、これも（コロナの情報同様）各国には余り信用されていないのだとか。まあ、人口密集地に落ちたというニュースは今のところないから、まあ今回は、ほっと胸をなでおろしてよいようだが、中国は22年までに更に11回、この縦30メートル、幅5メートル、重さ23トンというロケットを打上げて地上に落とす（落ちる）予定だというから、その内1発や2発は人口密集地に落ちてくる可能性だってないとは言えない。
中国は2007年には人工衛星をミサイルで破壊する実験を行い、その結果、宇宙空間に大量のごみ（デブリ）をばらまいて国際的な批判を浴びてもいるし、昨年も、アフリカ・コートジボワールの民家にロケットの残骸が落下する事故を起こしてもいるが宇宙大国としての名乗りをあげようとしている―――しかしこの乱暴な、市民に恐怖を抱かせる科学技術に将来人類の賛辞が集まるだろうか。
(05/20/21 10:00pm)
2021年5月14日
ズルをすると
スギ薬局の会長夫妻に愛知県西尾市の副市長がワクチン接種の予約枠を優先的に確保するよう便宜を図っていたことがニュースになった時、多分これは氷山の一角にすぎず、この手の「ズル」が次々と明るみに出るだろうし、明るみに出ない「ズル」も全国にはきっと数限りなくあるに違いない―――と思ったが、案の定、スギ薬局の報道の次の日には、茨城県城里町の42歳の町長や副町長ら計12人や、兵庫県神河町の、62歳の町長が、65歳以上を対象とした高齢者への優先接種の枠をズルして獲得、初日に接種を受けていたことがニュースになっていたから、タカさんの予感は図らずも当たっているようだ。
韓国で修学旅行生など300人もが死亡した旅客船フェリー・セウォル号転覆・沈没事故の際、乗客には客室にとどまり続けるように言いながら、自分たちは一般乗客のフリをして救助船に飛び移って救助された船長をはじめ一等航海士等の乗組員が、韓国国内のみならず世界的にも非難を浴びたのと同じで、コロナワクチンの接種という非常事態に高齢者へのワクチン接種を急いでやるという自分達の責任をそっちのけで、不当な手段でルールを破り抜け駆け接種を受けることを考えるような人種は、（生存本能むき出しにした正直な人ともいえるかも知れないが）、ルール通りの順番をまつしかない人たちにとっては、セウォル号のパンツ一丁で船から逃げ出した船長以下の「見下げた奴」と映るのは仕方ないのではないだろうか。
エジプトにいた時、空港カウンター前に搭乗券を手に入れようと我先にと群がるエジプト人たちに、「列を作って順番を守る」というルールに厳格なイギリス人が、青筋を立てて怒っていたことを思い出すが、怒鳴られた方のエジプ達は、早い者（強い者）勝ちのルールで生きてきただけに、「あのイギリス人何を怒っているのかなぁ？」といった顔できょとんとしていたものだ。
日本を訪れた外国人が奇異に感じることの一つに日本人が、何にでも（ラーメンにでも、新幹線にでも）列を作って並ぶことだという話を聞いたことがあるが、コロナという非常事態に至って、一部の日本人は劣化（？）してしまったのか、セウォル号の船長の様になってきているとしたら―――なんとも情けない話だ。
ちなみに、セウォル号の船長は、命は助かったもののその後、国民の怒りを買い終身刑の判決がでているようだし、事件当時7時間もの間、消息不明だったといわれる大統領朴槿恵はその後、国民の反発を買って失脚同然となり、今や長い収監生活を余儀なくされているらしい。
全国でズルをしてワクチン接種を受けた人たちは、コロナ感染の恐怖からはいち早く逃れたかもしれないが、今後は長く「あの時ズルしたことがバレたら」という恐怖にさいなまれることになるのではないだろうか。こういう時のズル行為には、世間の目という奴は、時効は無いだろうから。
(05/13/21 10:00pm)
2021年4月23日
ビデオ判定
審判の判定に対してビデオ判定を要求できるというプロ野球のリクエスト制度は、試合の流れがブツブツと中断されて間延びがするとか、絶対的であるべき審判の権威が失われる、といった反対論も多かったが（特にOBに多かった）、すっかり定着してきたようで今年のシーズンは、タカさんが応援している千葉ロッテと巨人の試合では、昨シーズンの一試合平均0.7回よりもずっと多いように感じる。
両チームともに接戦が多い所為なのか、監督（井口監督と原監督）が二人とも文句をつける性格という所為なのかは不明だが、確かに試合途中で度々間延びがしてしまうことや、「審判どこみてるんだ！」というムードが漂うことは、制度導入前にOB連中が言っていたことが多少は当っているようにも思う。
このビデオ判定のリクエストに基づき検証の結果、当初の判定が覆ること（すなわち、リクエスト成功率が昨年、一昨年の33％前後よりも、今年は更に上がっているような気がするが実際はどうなのだろう？
毎回、ジャッジを下すとリクエストが入り、検証の結果、前判定を覆さなければならないという立場に置かれた審判は、極端に言えば観客のみならず、テレビ中継を見ている全国の視聴者の前で自分の技量について恥をかかされたようなもので、その精神的なダメージは相当なものではないかと同情するが―――。
逆に言えば、リクエスト成功率が低い監督は、「イチャモンばかりつけるが的ハズレの多い監督」という目で見られ、来期契約が危ぶまれはしないだろうか―――。
なんでもデータ化されてしまう今のプロ野球では、自分の下した判定が覆った率の高い審判だとか、リクエストが失敗に終わった率が高い監督などと言うデータもランキング形式で出てくるのだから当事者はたまらないのでは～とも思うが～。
現在はリクエストできないとされているストライク、ボールの判定や、ハーフスイングやボークの判定も、その内に人間の審判ではなく、AIによる機械判定にすれば、こういった問題は起きないかもしれないが―――果たして、それでファンは野球観戦を楽しめるだろうか？
かつて名物審判と言われた二出川審判は、翌日の新聞に自分のジャッジが明らかに間違っていることを示す写真が掲載されたとき、「これは写真が間違ってる！」と平然と答えたというが――今の時代、「このビデオ画像は間違っている」などと言える審判がいたらどうなるだろうか―――。
（04/22/21 10:00pm）
2021年4月16日
エポックメーキング
EV車はエンジンを持たないでモーターで走行するのだから二酸化炭素や窒素酸化物を排出しないゼロエミッションカーである。又、現在開発が進められている自動運転技術が完全実現すれば、人が運転する必要もなくなる。すなわち、EV車が完全普及しそれがどれもAIによる完全自動走行をする社会――そういう時代が一体あと何年後に実現するのだろうか。
ローマ教皇が地動説を認めガリレオに謝罪したのはガリレオの死から350年がたった1992年のことであった。EVもAI運転も、近年の技術開発の速度にはめざましい物があり、そういう社会が実現するまでの時間は、地動説が容認されるようになるまでの時間ほどは勿論かからないだろうが、そうはいっても、古い思想やいままでの技術で、成り立っている既存勢力が、一気に新しいものに入れかわるということも、極めて起きにくく、その切り替わりには思った以上に時間がかかるようにも思う。
ガソリンエンジン車の部品総数はエンジン回りだけでも3万、全体では10万とも言われており、それ等の部品産業、車両メーカーといういわば組み立て企業を頂点にした裾野を形成していてそれらのいわゆる自動車関連産業といわれる分野で働く人の総数は、540万人と日本の全産業人員の約7％をしめており、その家族も含めれば大変な数にのぼるが、もしすべての車両が部品の数だけでもガソリン車の1/10以下というEV車に置き換われば、その産業に携わる人は勿論1/10以下で済むだろうし、モーターで動くとなれば電気メーカーが参入できるのだから「自動車産業」その物がいらなくなってしまうかもしれない。
無人の完全自動運転が実現すれば、80万人いると言われるトラックドライバー、30万人といわれるタクシードライバーが職を失うばかりでなく、宅配便、郵便配達、路線バス、あるいはゴミ収集車などもいずれ無人化されてしまうと大勢の人が職を失うことになるだろうし、自動車保険会社、運転教習所、免許センター、自動車修理業や白バイ警官ですら、いらなくなってしまうかも知れないとなると―――そんな大規模な天動説から地動説への転換のようなエポックメーキングな(画期的な)転換が10年や20年の間で起きるとは中々考えられないのだが―――。
（04/15/21 10:00pm）
2021年4月9日
もつ煮込み
昔は生まれてこの方肉類や乳製品などは口にしたことがないというおばあさんというのが結構多かったものだ。
亡くなった父は、80近くになるまで肉料理が好物だったが、その母、すなわちタカさんの祖母は生まれてこの方肉類とチーズやバターなどの乳製品を口にしたことはないといっていた。タカさんは若い時はともかく最近は肉よりは魚の方を好むようになってきたから、祖母の隔世遺伝子が結構強いのかもしれない。
日本で、大っぴらに牛肉が提供されるようになったのは、慶応3年（1867年）、芝の牛鍋屋が最初だというから今でこそ、日本料理の代表の様にも言われるすき焼きにしてもその歴史はせいぜい150年程に過ぎないわけだが、今では日本人にとって肉食は欠かせなくなっており、特に若い年代ではダイエット中の女性でもない限り肉を敬遠する人は少ないのではないだろうか。
ロンドンにいたとき、丁度狂牛病騒ぎがあって有名ステーキレストランが軒並み牛肉を出せなくなっていたことがあって、その時、美味くもないチキンのローストと、羊の内臓をミンチにして羊の腸につめて茹でた「ハギス」というスコットランド料理が出てきたが、スコットランドの人には申し訳ないがその見た目と強烈さに仰天したことがあった。その時一緒に食事をしたイングランド人の同僚は「イングランドではみじん切りにした腎臓でつくるキドニーパイというのは食べるが、ハギスなんていうのを食べるのは初めてだ」といっていたから、我々日本人が「イギリス」とひとまとめで呼んでいる国は、実はスコットランドだとかアイルランド、ウェールズといったそれぞれ異なるアイデンティティーを持った地方の連合体なのだということを知らされた。（イングランドの中心地であるロンドンのパブにはスコッチウィスキーはあるが、飲む人はほとんどいない）
内臓の料理といえば、最近のよく見かけるもつ焼きとかもつ鍋は、内臓肉を使った料理だが、今から50年も前には、なかったように思う。関西では内臓肉のことをホルモンといっていたようだがホルモンとは関西弁で「ほおる物」という意味だとも聞いたことがあるが、関東では見かけることはなかったように思う。スコットランドのハギスをイングランド人のロンドン子が知らないのと同じようなものだったのだろう。
そういえば、船橋や大井等の、公営競馬場に行った時には、モツを味噌で煮込んだ「もつ煮込み」をつまみに昼からビールなんていうことをやっていたが、最近はコロナで競馬も無観客開催になってしまいその機会もなくなってしまった。馬券の方は、ネットで買えるものの歳をとると、やはり競馬もリアルの方が遥かに楽しいように思う。
（04/07/21 10:00pm）
2021年4月2日
覆水盆に戻らず
ニュースを聞いた時、エイプリルフールのジョークかなと疑ってしまったぐらいだが、ニューヨーク州のクオモ知事と州議会は、嗜好用大麻の使用を合法化する法案に正式に合意したという。 法案が可決すれば、ニューヨークでは、21歳以上ならば大麻を購入できるし、個人消費用なら自宅での栽培も許可されるという。
調べてみると、嗜好や医療目的での大麻を解禁している国は、ヨーロッパの英・独・オーストリア・オランダなどと多く、中東でもイスラエルなどでも許されているという。アジアでもなんと韓国で医療用として合法化されているというから、厳格に大麻を禁じている日本はその内に、酒を禁じて取り締まっているサウジやイランの様に「遅れた国」と言われるようになる可能性すらある。
教義的に酒を禁じている宗教は多いが大麻を明確に禁じている宗教は意外と少ないといわれるのは、大麻は、幻覚作用を伴うためにそれが宗教的イニシエーションに使われることも多かったからかもしれない。（多くの宗教で、儀式の際に香を炊くのもある種の幻覚作用を誘っているのかもしれない）
ニューヨークのクオモ知事は大麻を解禁するメリットの一つに州税収入が期待できることをあげており、ニューヨーク州だけでも年間400億円の収入が見込めるという。たしかに非合法化しているとこの分の収益が、闇の組織の手に渡っている訳で、合法化したら闇組織の収入減を絶つことになり治安が改善するかもしれない。
税の大きな収入源である所為なのかタバコや酒が合法化されているのに、日本では大麻を禁じているのはなぜか？という疑問が大麻解禁論者からよく投掛けられるが、それに対する余り明確な答えをきいた記憶はない。（より刺激の強い薬物への入り口になるから―――という理由が上げられるが、ビール好きが皆、ウィスキー好きになる訳でもないと思うが―――）
もっとも、銃所持を合法化してしまっている国に比べれば、厳しくそれを規制している日本の方がはるかに安全であるのと同じで、一旦大麻を解禁してしまって大変なことになってしまえば、もう元へ戻せなくなってしまうかもしれないのだから、やはり世界標準がどうであろうが日本は大麻を厳しく取り締まり続けるに越したことはないと思う。ことわざにも「覆水盆に戻らず」というから。
（04/01/21 10:00pm）
2021年4月1日
汀のさくら
壇ノ浦でわが子、安徳天皇とともに入水したが助けられて京に連れ戻された建礼門院は尼となり大原にある寂光院で平氏一門の菩提をとむらっていた。その建礼門院を後白河法皇が訪ねていく場面を描いたのが平家物語の大原御幸だが、物語の中でも一番といってよいほどの名場面だ。法皇が訪ねていった寂しい尼寺の情景として「池水に汀のさくら散り敷きて 波の花こそ盛なりけれ」という一文が好きで、大原まで足を延ばし尼寺である寂光院を訪れたことがある。
大原御幸に描かれた池は、それなりに大きな池だろうと想像していたのだが、実際には想像よりはるかに小さな池だったのにはちょっと驚いた。花の季節ではなかったので、水際にさくらの花びらが浮かんでいるという情景を見ることはできなかったのだが、何代目かのさくらの木はちゃんと池の汀にあり花の季節であれば、千年前の物語の情景を今も見せているのだろうなぁ～と想像させるに十分だった。
千鳥ヶ淵のさくらもそうだが、汀に植えられたさくらは、満開を過ぎて散り始めると、花びらが水面に散り落ちて帯状になって浮かんでいて、その様を「花筏」（はないかだ）という美しい言葉で現すが、大原御幸の「汀のさくらちりしきて」、という情景もきっと花筏だったのではないかと思う。
我が家の近くの川沿のさくら並木も、今日観たら散り始めており、花びらが川に花筏になってただよっていた。
日本人がさくらを愛でる一つの理由は、さくらの散りぎわの潔さにあるようだ。多くの花はその盛りには皆それぞれに美しいが、くちなしのように満開を過ぎて花びらが変色しはじめても、そのまま散らずにしがみついている花や、椿の様に花びらではなく首からポロリと落ちていく花とちがって、さくらは潔さをよしとした昔の日本人の魂に合致するものだったようで、江戸時代の国学者本居宣長も「敷島の大和心を人、問はば
朝日に匂ふ山桜花」と詠っている。
散り始めた散歩道のさくら並木だが、あと一週間もすればもうあの見事な満開がうそのような、若葉のさくら並木になるのだろう。
さくらの花を自分の短い人生になぞらえ見事に咲いて、見事に散っていきたいものだと思い、散りぎわを見てちょっと寂しい思いにとらわれるが、同時に、自分の人生が終ってもその後に続く人たちがいると思えるから日本人は、さくらが好きなのかもしれない。
（03/31/21
10:00pm）
2021年3月26日
うららかな
さくらの季節が随分はやくなっているような気がする。最近は卒業式の記念写真につきものになっているさくらだが、50年程前は、入学式の記念写真の背景だったことを思うとやはり、地球温暖化が進んでいるのだろうか。
タカさんの家のそばの川沿いの並木のさくらも満開になってきた。今年もお花見に遠出はできないが、散歩がてら、ぷらぷらと花見気分を味わってきた。
さくらの花の咲くころの穏やかな日ざしのことを「うららかな」という万葉言葉で表すが、まさに今日の日ざしがその「うららか」にぴったりだった。
いまでこそ日本の春といえばさくらだが、奈良時代にもっとも愛された花は梅であったという。梅は中国で最も愛され詩などにもよく歌われていたこともあって、中国文化にあこがれていた奈良時代の人々も、これを愛でていたようで、元号の「令和」の由来となったのも万葉集にある梅見の宴であり、さくらの花見の宴ではなかった。（奈良時代に編纂された万葉集には、梅の花を歌った歌は多いが、さくらの花を詠ったものはわずかしかないという）
しかし、これが平安時代になると、突如さくらを愛でる歌が多くなり、たとえば「古今和歌集」では、梅の歌18首に対してさくらは90首と、逆転しているから、この辺りで日本人が、大陸渡来ではないオリジナルの詩情を持つようになったのかもしれない。
近年、中国各地では日本の影響で、さくらの木が植えられ桜の名所と言われるところが多数出現、日本のようなお花見が行われているという。コロナでお花見も自粛傾向の日本よりも、ひょっとして今年は（人口も日本の10倍多い）中国のお花見の人出の方が多いかもしれない。
ワシントンのポトマックの花見も有名だし、カリフォルニアやシアトルなどにも日本人が植えたさくらの花の名所がたくさんある。日本人のオリジナル文化ともいえる花見が世界で受け入れられているという話は、それこそ「うららかな」気分にさせてくれる。
（03/25/21 10:00pm）
2021年3月19日
ファクターX
21日で緊急事態宣言が解除されることになったが、もこれ以上続けても、もう皆の緊張感が持続せず宣言のめざましい効果が見えるとも思えないから―――、という理由であり、いってみれば人対コロナの攻防戦において人間の側が、白旗をあげたようなものと言えなくもない。
欧州では、変異ウィルス感染者の急激な増加にともなって、外出禁止措置などが強化されたり、延長されたりしているのに、日本では諦めたかのような措置がとられるというのだからいささか不安を感じないではないが―――。
只、患者の重症化率や死亡率が欧米各国などに比べると日本は一桁も二桁も低いというのは事実で、コロナ騒ぎが始まった昨年初め以来、この比率にあまり変わりないことのだから、確かに、欧米に横並びの措置をとる必然性が薄いということも事実だろう。
日本人のコロナ重症化率や死亡率の低さについては、昨年来ノーベル賞受賞者である山中伸弥教授が「日本には何かわからないがファクターXがあるのではないか」と発言し、さてファクターXは何なのかという議論がさまざまになされてきた。「日本人のほとんどが、BCGを打っているからではないか」とか「ネアンデルタール由来の遺伝子をもっていないからではないか」等々とも言われたがまだ今のところ、そのファクターXなるものは特定されている訳ではない。（日本人がよく摂る、味噌がいいのではないか――等という説まで出てきては、段々似非科学っぽく聞こえてくるが）
第三波の大波が来て以来、このファクターXの話は余り出なくなってきているような気もするが、最近山中教授は、なんといっておられるのだろうか？
そういえば、この冬は日本でのインフルエンザ患者数は昨年比1/500の14000人（昨年は729万人）だったというが、この理由はコロナ騒ぎで皆がマスクをするようになり、頻繁に手指の消毒をするようになったことが影響しているのではないかともいわれる。そういえば、以前から、花粉症の為に春先はマスクが離せないという人は、インフルエンザにはかかり難いともいわれていたからファクターX候補は、欧米に比べて高いマスク着用率―――なんていうこともかんがえられかも。もっとも日本だけではなく、欧米ではインフルエンザ患者が大幅に減っているとしたら話は違ってくるが―――。
それにしても、気になるファクターXである。
（03/18/21 10:00pm）
2021年3月12日
お誕生日会
小学生の頃、クラスによっては月初めにその月生まれの生徒達の「お誕生日会」というのがあった。当月生まれの生徒の名前を読み上げ、クラスで「ハッピイバースデー」を歌うという程度の簡単なものだったが（昔のことだからプレゼント等もなかったように思う）、それはそれでちょっとうれしいものだった。
8月生まれの妻は、誕生日が、夏休中になるので学校での誕生日会がなくて寂しかったという。今も小学校ではお誕生日会をやっているのか如何か知らないが、もしやっているとしたら妻と同じ8月生まれの孫娘は、同じ思いをしているのだろうか。
タカさんの子供時代に比べたら祝事でもなんでも派手になっている昨今だけに、お誕生日会等というのもあったとしたらプレゼントがどんどん派手になっているなどして批判の声が上がり案外「お誕生日会禁止令」なんていうのが出ている可能性はありそうだ。（バレンタインデーのプレゼントを学校に持ってくるのは禁止、という学校は多いという）
妻や孫娘のように８月生まれが、日本の全人口の1/12いるように、正月元旦やや大晦日が誕生日だという人も1/365はいるはずだ。
3月11日は、テレビも新聞も朝から、10年目を迎えた東北大震災関連の番組や記事であふれている。大震災で亡くなられた方、近しい人を亡くした人も多くその人たちにとっては、鎮魂の日ではあるのだが、3.11が誕生日という人も、日本には1億3000万の1/365、すなわち36万人程度はおられる訳はずだ―――。
今日、駅にいったら、晴れ着姿の女性を何人かみかけたけれど、卒業式かなにかがあるのだろう。晴れ着を着ているからには、今日が本人にとっても、親御さんにとっても一生に一度の喜びの日でもある訳で、人の世の織りなす喜びや悲しみのタペストリーには、何か感じる物があった。
しかしこの3.11という日も、100年後、あるいは200年後には思い出す人もいない一日になってしまっている可能性は高い。「すべてこの世は事もなし」ということなのだろうか。
（03/11/21 10:00pm）
2021年3月5日
虫愛ずる姫君
我々人類の遠い祖先である類人猿は、太古の時代には樹上生活をしていた。森の中の30メートル以上高いところまでは、ネコ科の猛獣たちも登ってこられない比較的安全なところであったのだが、唯一の危険な天敵といえばヘビであったという。その後、地球の乾燥化に伴って森林が減少したために、人類は、樹上から降りて草原で暮らすようになったが、太古に身についたヘビを怖がるという本能は引き継がれ現代人にも残っているという。その証拠に、生まれてからまだ一度もヘビを見たことのない赤ん坊でも、ヘビを見ると怖がるという。
ということは、現代では、ハチュウ類をペットとして飼っている女性もいないではないが、彼女等のこういった好みは、後天的に備わったものであって生まれてすぐは、ヘビを怖がっていたはずという。
ファーブルや養老孟司先生あるいは俳優の香川照之の様に昆虫学者、あるいは昆虫好きと言われる人のほとんどが男性、男の子であって、昆虫好きという女の子は少ないが、どういう理由からだろうか。本能的な違いが男性と女性で違うとも思えないのだが―――。
タカさんは、ヘビは本能的に嫌いだが、ゴキブリやムカデでも女性のように異様に怖がることはないし、妻が大騒ぎするクモだって平気だ。（鹿児島では子供の頃、黄金蜘蛛を捕まえて、よく蜘蛛合戦をして遊んだものだ）
もっとも、最近は徐々にではあるが、虫好きの女の子（昆虫女子ともいうらしい）が増えてきているという。彼女たちの中には養老先生たちのように飼育するとか、観察するというのでは飽き足らず、もっぱら「食べてみる」方に興味を持つ人も多いとか。世界的な人口増加に伴う食糧不足が懸念される昨今、豊富な蛋白源としての昆虫食が注目されはじめているというから、昆虫女子は人類の先頭を走り始めているのだろうか。
そういえば平安時代に書かれた「堤中納言物語」のなかに「虫愛ずる姫君」という話がのっていて、宮廷の姫君なのに、虫を捕まえてこさせてはそれを飼育して喜んでいる様が描かれており、しかも彼女が当時の女性としてはあり得ない程、身なりを気にせず、髪を耳の上に掻き上げ、眉毛もゲジゲジ眉にしていて、男には一向に興味を示さない――というのだが――― 。現代の昆虫女子の千年先を行った姫君だったのだろうか。
（03/04/21 10:00pm）
2021年2月26日
ガイアの怒り
我々が日ごろ利用するエネルギーは、ほとんどが電気エネルギーに変換されているが、元はといえば主には石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料の燃焼エネルギーである。
地球温暖化防止の為の脱炭素社会の構築が叫ばれている中、なるべくこういった化石燃料の使用を削減またはゼロにしたいものだが、化石燃料に代わり得るといわれる原子力エネルギーは安全性の問題で、また自然エネルギーは何よりもコストの面で今のところ化石燃料エネルギーに比べ大幅に高く、また風が吹かなければ発電できない風力とか、日が照らなければ発電できない太陽光、といった具合にいずれもその供給が不安定であり、また大型の風車や大規模な太陽光パネル群を作るためには結局、又大量の資源とエネルギーを必要とするし―――耐用年数もせいぜい20年程度となれば、100年後、200年後の世界は風車や太陽光パネルの墓場だらけになってしまう等というディストピア化さえ考えられる。
はてさて、温暖化する地球か、風車とソーラーパネルの墓場化した地球か、という究極の選択というのも実に悩ましい。
数々の難局を乗り越えて500万年の間、進化し続けて今日の繁栄をえてきた人類なのだから、きっとここも何とか乗り越えていくものと信じたいが―――。
例えば、夢のエネルギーと言われる核融合エネルギーを安価に作り出せるようになるとか、送電ロスゼロの超電導線材が開発されれば人類のエネルギー問題も、地球温暖化問題も一気に解決するだろうが、ともに今のところその技術的な目途はたっておらず、いわばまだSFの世界での話にとどまっている。
60年代にイギリスのラブロックがガイア仮説を唱えたが、地球はギリシャ神話でいう大地の女神ガイアそのものであり、その上に生きる人間はガイアの怒りに触れると、滅ぼされてしまうという説だが――。
植物が繁茂していた太古の地球の二酸化炭素濃度は現在の約10倍もあって巨大化した当時の植物にとっては快適な環境だったというから、二酸化炭素の増加の方は、ガイアが怒るかどうかは分からないが、地球表面を風車とソーラーパネルで墓場化する方では、ガイアは相当怒りそうだ。
ガイア仮説を信じるわけではないが、人類は、核融合か超電導線材の内の一つでもなるべく早く実現させなければ―――とは思う。
（02/25/21 10:00pm）
2021年2月18日
氷河期は来る
温暖化懐疑派であるトランプ氏が退場し一気に温室効果ガス対策を強調するバイデン政権になって最大の温暖化ガス排出国であるアメリカをはじめ世界の産業構造も大幅な変革が迫られている。
そんなニュースが飛び交う中、米国中西部は記録的な大寒波におそわれトランプ支持派のみならず民主党支持者の中にも「地球温暖化って本当かい？」という声があがっているのだとか。もっとも強固な地球温暖化支持派にいわせれば「記録的な大寒波も地球温暖化の所為」だそうで、彼等の論法で行けばなんでもかんでも温暖化の所為になってしまうから、その内「コロナパンデミックも温暖化が原因」なんていう説も出てくるかも―――。
長い地球史の中でみていくと地球温暖化と寒冷化は、繰り返してきており南極の氷床などの分析結果からは過去80万年間だけをみても、10万年スケールで氷期と間氷期が繰り返す気候変動が起こっていることが分かっている。
直近だと約2万年前に氷期は終わり、今は間氷期に入っていることも分かっているが、これは地球公転軌道が9万年周期で楕円軌道と真円に近いかたちでブレる事で太陽と地球の離心率が変化することや、地球の自転軸が、4万年周期で22度から24.5度の間で変化しており、現在23.5度の自転軸は後1万2千年ほどで22度に近づき極小になるというが、そうなると陸地が多く氷床ができやすい北半球の夏は寒くなるという。
公転軌道の離心率や、自転軸の変化などを複合したミランコビッチ・サイクル（参照：「ミランコビッチ・サイクル」11/29/14）で計算すると、今から6万年後には、地球は確実に氷河期に突入するという。
我々人類（ホモサピエンス）の歴史はたかだか20万年に過ぎないが、人類は、今までに少なくとも2回の氷期を経験しているわけで、6万年後も人類が繁栄しているかは分からないが、もしまだ繁栄していれば、その氷河期の直前には地球寒冷化防止の為に、「二酸化炭素やメタンをもっと発生させよう！」「地球と人類を寒冷化から守ろう」などという運動がおきているかもしれない。
（02/18/21 10:00pm）
2021年2月12日
スーパーカーはいかが
サウジアラビアに行った時、砂漠の中にクレーン車やブルドーザーといった日本製の建機車輌が千台ちかく放置されている風景に出くわしたことがあった。「あれはなんだ？」と現地スタッフに聞いたところ、「故障した車両を修理するのも大変だし、新品を買えば済むことだから――」との答えだったので、オイルマネーで潤っている国とは聞いていたけれど、数千万円、中には1億円を超えるとも聞く建機車輌をちょっと故障した位で捨ててしまうとは、なんと剛毅な！とそのアホみたいな金遣いに感心するやら呆れるやらしたものだった。
産油国で、サウジ同様その金満ぶりが有名なアラブ首長国連邦のドバイの市街地では、最近フェラーリやポルシェ、ランボルギーニといった、夢のスーパーカーの放置が急増しているとのニュースをYouTubeでみた。
一台数千万もする車を、鍵もついたままで放置するとは一体、どういうことなのかと仰天し、あのサウジの建機車輌の墓場を思い出したのだが――こちらは皆ちゃんと動く新品車両だというのだから何とも訳がわからなかったのだが――。
これもどうもコロナ禍が関係しているようで、コロナで職を失った外国人が、ローンの支払いが残った高級車を意図的に放置して、国外に逃亡してしまうケースが続出、結果新車のスーパーカーの墓場が市街地に出現しているというのが真相らしい――――。
サウジやアラブ首長国連邦といった国々ではクレジットカードやローンの滞納は法で罰せられるので、捕まる前に国外に逃亡してしまおうという不届き者が絶えないというし、なにしろアラブの産油国の、外国人と現地人の比率が極端なところでは9対１にもなるので、滞納しそうな外国人の場合、自分の出身国や他国へさっさと移住（逃亡）してしまうのに抵抗がないらしい。
新車好きが多い日本人には向かないかもしれないが、コロナ禍から脱したと豪語している中国辺りだったら、この放置車両をちょっと磨きなおして売り出したら結構いい商売になるかもしれない――――。いや、もうすでにそんな商売が始まっているかも―――。
（02/11/21 10:00pm）
2021年2月10日
建国記念の日
通称祝日法ともいわれる「国民の祝日に関する法律」には、全14日間の内13日の祝日が、」例えば1月1日（元旦）あるいは1月の第二月曜（成人の日）等と明示されているが「建国記念の日」は「政令の定める日」とあり日付がない。
これは建国記念の日が制定された昭和41年（1966年）当時、戦前の紀元節であった2月11日を建国記念日とすることは、軍国主義の復活に結びつく――という社会党などからの反対があり、与党側が妥協案として「別途、政令に定める日としておけば、将来、建国記念日を変えたい時に法律を変えるという面倒な手続きをせず、政令だけを変えればよいではないか」という妥協案を出し、それが国会で可決された結果であり、その後50年以上そのまま「政令に定める日」として2月11日が定着しているからである。すなわち、日本の建国記念日は仮に2月11日になっているだけに過ぎないということにもなる。
確かに日本の「建国」記念日は一体日付的には何月何日が相応しいのだろうか――と考えてみると、これは中々難しい。
たかだか（といってはちょっと失礼だが）建国（1776年）から二百数十年に過ぎないアメリカや、フランス革命の始まった1789年の7月14日をパリ祭として祝うフランスが世界の中では今や「古い建国記念日をもつ国」のトップクラスになるほど、世界のほとんどの国が1900年代以降の植民地からの解放やら独立した日付を建国記念日としており、日本の建国記念日の由緒は群を抜いて古い（古すぎる）し、ちょっと眉唾っぽさもないではない。
紀元節は、神話的人物である神武天皇が即位したといわれる年の１月１日（太陽暦でいうと2月11日）を皇紀元年としてこの日を紀元節すなわち日本の国が始まった年と定めたのだが、勿論神武天皇自身が神話的人物である以上、歴史的事実として「この日に建国された！」と発言するのはちょっと恥ずかしいところもないではない。
しかしかといって例えば明治元年の始まった日（1月25日）だとか戦後の連合国による占領が終結し日本が独立した日（4月28日）を建国記念日だと定めても、これも又反対論が巻き起こるだろうし、やっぱり神話を持ち出す位のあいまいさの方が無難であるともいえる。（キリストが生まれた時を元年とする西暦（AD）だって実際にキリストが生まれたのはBC4年だとかいやBC2年だ、はたまたAD15年だ、といった具合に諸説あるし、キリストの実在さえ疑う宗教だってあるのだから、古事記が神武天皇は137歳迄生きたと書いていてもまあ目くじらを立てる必要もないかも知れない。
いずれにせよコロナ下のリタイアの身にはあまり関係ない祝日だけれど、建国にかこつけて一杯呑むとするか。
（02/09/21 10:00pm）
2021年2月5日
西洋崇拝
新聞に防衛省、自衛隊での11月月間コロナ感染者数が100名を超していたという記事が出ていた。クルーズ船以来、最近の宮古島やコロナ最前線でのクラスター対応や大規模災害での復旧活動などでの活躍が賞賛されることの多い、自衛隊だが、自衛隊に批判的なマスコミや左派にとっては、「月間100人もの感染者を出しているとは！自衛隊は何をやっているのだ！」と言いたいようだ。
現在自衛隊・防衛庁の人員は総勢300000人からすると100名の全体に対する割合は3000人に1人、すなわち0.03％ということになり、0.03％ということは全国の警察官（250000人程）でいうと月間75人程度ということだから、署長以下幹部職員全員が送別会やら忘年会で集まった結果、一つの署が機能不全に陥ったとかいう記事を何度か見た記憶からすると、自衛隊だから特に「たるんでいる！」という訳ではなく今の日本では避けられない割合と、思えなくもない。まして国会議員とその秘書などを含めた「議員及び国会関係者」よりは、比率的には少ないように思えるし、東京都での12月の月間感染者数は0.03％よりは多かったようにも思うのだが―――。
統計数字を使ってごまかしによく使われるのが、この種の、総数と比率の使い分けだ。
人口100人のA村と1,000人のB村の、2つの村があって、この10年間でA村では1件、B村では9件の窃盗事件が起こったとすると、A村での窃盗事件発生率は、1％、Ｂ村では0.9％ということになる。窃盗事件が起きたところには住みたくはないが、どちらかに住まなければならないとしたら、村の規模を知らず、犯罪発生率だけを聞かされれば、Ａ村よりはＢ村の方がましかなぁと思うだろうし、１件対９件の発生数だけを知らされた人なら間違いなくA村の方が、まだ治安はよさそうだと思うだろう。
先日テレビの民放のニュースワイド番組で、コメンテーターがドイツの対策を称賛し、「日本もドイツを見習え！」みたいなことをいっていたが、感染者数が2600万人（死者45万人）を超えたアメリカや、インド、ブラジルなどは論外としても、感染者数224万人（死者数5万９千）に上るドイツの何に見習え！と言っているのか今一つ理解できなかった。（ドイツの総人口は、8,300万人）
今現在、日本の感染者数は40万人、死者数は6千人と、とんでもない数ではあるが、総数をとっても比率（日本の人口は12,500万人）をとっても、ドイツよりは少ないはずだが――。
まさかとは思うが、明治以来の西洋崇拝が、未だに日本のテレビコメンテーターさんたちを支配しているのだろうか。
（02/04/21 10:00pm）
2021年1月29日
振袖火事
世界三大火災の一つである明暦の大火（あとの二つはローマ皇帝暴君ネロが火をつけたといわれるローマ大火と、1666年に起きたロンドン大火）は、別名振袖火事として知られている。恋わずらいが原因で死んだ裕福な質屋の娘、梅乃の弔いで棺に掛けた振袖を梅野の供養のために燃やそうとしていた時に、折からの北風にあおられた振袖が寺の本堂の屋根へと舞い上がり大伽藍が火に包まれてしまい、この火事がたちまちの内に江戸市中を焼き尽くし一説には10万人ともいわれる犠牲者を出す大火事になってしまったという訳だ。
選挙で不正が行われた、選挙が盗まれた、と叫ぶトランプ氏が集まった支持者たちに向かって、「大統領選挙の最終承認手続き中の国会議事堂に行って選挙を取り戻そう！（So Let’s walk dawn Pennsylvania Avenue!）」とアジったのだ。その言葉に従って国会議事堂に殺到した群衆の一部が議事堂に乱入、死者を5人も出す米国史上に大汚点を残す騒乱になったのだ。
大衆を扇動して暴動事件のきっかけを作ったとしてトランプ氏を弾劾裁判にかけるべしとの声が上がり、下院では賛成多数でトランプ氏の弾劾裁判が可決され、いよいよ2月7日から上院での同氏に対する二度目の弾劾裁判が始まることになった。
裁判の先行きについては共和党からも17人の弾劾賛成議員が出ないと弾劾は成立しないといわれ、そこまでの造反議員は出ないとも予想されるだけに、結局トランプ氏の有罪は成立しないと思われるが、世界に冠たる民主主義の大国と言われる（言われた？）アメリカにとっては何ともみっともない話である。
この一連の議事堂乱入から弾劾の動きに対してトランプ氏はまだ一言も自分の責任を認めていないし謝罪もしていない。大火の火付け役（火元）であるにも関わらず一言も謝罪しないどころか、未だに「選挙を盗んだ奴が悪い」言い続けるのだから、なんともトランプ氏らしいではないか。
アメリカ最大のロビー団体である全米ライフル協会は、銃撃事件が起きるたびに遺族たちから巻き起こる、「銃規制をせよ！」という声に対して、いつも「銃が悪いのではない、銃を撃った犯人が悪いのだ！」という屁理屈を並べて銃規制の強化に反対するが、こういったライフル協会や、トランプの使う日本ではちょっと考えられない屁理屈を、アメリカ人の多くが心から信じてしまうところが何とも理解できないところだ。強権独裁を続ける習近平や共産党、そしてプーチンなどが使う論理もアメリカのトランプ氏や共和党、あるいは全米ライフル協会の論理と大差はない。
ちなみに向島の回向院は、あの振袖火事の犠牲者たちを回向するためにたてられたのだが―――。アメリカや中国ではどうなるのだろうか。
（01/29/21 10:00pm）
2021年1月22日
最大のリスク
アメリカの調査会社が年初に発表した、世界にとって今年最大のリスク予想の第一位は、「アメリカの次期大統領」だった。トランプ支持派との間で起きるアメリカ社会の分断が抜き差しならなくなるのではという予測が年初にはささやかれていたことが、その第一の背景にあったからという面が大きかったからだが、トランプ氏の扇動によって起きたともいわれる国会議事堂襲撃事件によって昨秋の大統領選挙でトランプ氏に投票したかなりの割合の人たちが、今や肩身の狭い思いをしているだろうし、新大統領に対する支持率も就任前の時点で59％と急上昇していることからするとトランプ氏のオウンゴールによって幾分、アメリカ社会の分断リスクは弱まったようにも思える。
そうなるとバイデン氏の健康問題、特に認知症発症リスクが取り沙汰されることにもなる。すなわち就任時で78歳（任期中の4年後には82歳）という歴史上最高齢の大統領ということで彼自身の健康リスク、特にトランプ氏がことさら噂をがなり立てた（トランプはバイデンのことをsleepy Joe――寝ぼけたジョーと罵倒していた）認知症リスクが「世界にとってことし最大のリスク」になりはしないかと懸念する向きもあるという。
レーガン大統領は大統領退任後の83歳の時に自らが認知症であることを公表しておりその際には既に大統領就任中の時から症状がでていたのではないかなどといううわさもあったし、あの鉄の女サッチャー女史も、晩年は認知症であったことが彼女を描いた映画「鉄の女サッチャー」にも描かれているが、レーガン同様、首相在任中からその症状はあったという噂もとんでいた。認知症であってもしっかりした人はいくらでもいるだろうが、世界、あるいは一国の指導者ともなると確かに大きなリスクではある。
かつて「痴呆症」「老人ボケ」などといわれた認知症だが、昔はこの症状に、言及することにも失礼にあたるとされ、はばかられることもあって、例えば昭和天皇の皇后が晩年この病になられた時、マスコミは「老人特有の症状」などと言う婉曲した表現をしていたものだが、最近のマスコミは遠慮会釈なく「認知症」を使いしかもそれが「世界最大のリスク」の一つに数えられるようになったことを思うと、短い間に世の中は随分変わったと言えよう。
世界一強大な国であり日本の最大の同盟国でもあるアメリカの指導者となったバイデン氏がややこしくなってきたこの世界情勢を強力なリーダーシップで4年間、導いて欲しいものだ。
（01/21/21 10:00pm）
2021年1月15日
マルクスの失敗
2年程前、マルクスの生誕200年の祝典で中国の習近平は「中国の経済発展がマルクス主義の正しさを証明する「鉄壁の証し」だ」と述べた。
政敵をことごとく排除し独裁体制を固め、「一帯一路」をぶち上げて発展途上国や欧州の破綻しつつある国々の頬を札びらで叩いて言う事をきかせる―――という得意絶頂にあってこその豪語だったのだろうが―――この発言は二重の意味で間違っている。
一つには中国の経済発展はマルクスの唱えた理論に基づいたものではなく、むしろその正反対の理論、すなわち資本主義理論に基づく「改革開放路線」を推進したことや、共産主義が否定していた「私有財産制」を復活させ、個人による起業（まさに資本主義的な）を容認したからこそ遂げられたものであることだし、第二の大きな間違いは、未だに、中国の経済発展を妨げている最大の要因が、（まだ残っている）共産主義経済思想がどうしても生み出してしまう非効率な国有企業や、硬直した官僚組織、それに共産党一党独裁制が宿命的に持つ全体主義的、抑圧的な政治体制そのものだということだからであり、それ等の事実を冷静にみれば、習近平の言った「マルクス主義の正しさを証明している」ということ自身がとんでもないフェイクだということなのだ。
今年は中国共産党結党100周年に当たるし中国共産党が国民党を台湾に追いやって中華人民共和国を建国してから73年になるが、この73年間の間だけでも、大躍進政策の失敗や、文化大革命、などで大量の（一説では8000万人ともいわる）餓死者を出してきたし、天安門事件や新疆ウィグル地区での、残虐行為や人権無視を生み出してきたのも、未だに中国に残る教条的な共産主義な面だ。
歴史的に見れば人類は宗教戦争によって膨大な数の死者を出してきたが、宗教の一種だとも揶揄されるマルクスの理論もまた人類に厄災をもたらしてきたと言えるのではないだろうか。
（01/14/21
10:00pm）
2021年1月8日
向かい風
江戸川沿いの堤防上の遊歩道が人ごみをさけての散歩には最適だと出かけたのだが、河口付近から吹き上がってくる強風が向かい風となり、時折は前に進めない程だった。風速が秒速5ｍ以上15ｍ未満だと歩きにくくなり、15ｍを超すと歩行者は、時には転倒することもあると気象庁の指標にもあるがそれを実感した。
それでも必死に風に向かって歩き続けたのは、風が適度な負荷になって却ってコロナによる運動不足解消の為にはよいのではないか―――等と思ったことと、帰り路は追い風になるから楽ができるのではないか―――等と考えたからだ。どうにか河口まで歩き海を見ながら少し休んでから来た道を戻ったのだが―――。風は相変わらず吹いているのに全然追い風を感じないからなんだか損をしたような気分だった。
それでつくづく考えたのは、この向かい風と追い風の感じ方は、万事に於いて、あるいは人生そのものだって通じるものではないかということだった。自分が逆境にある時は、つらく苦しく感じるものだが、順境にある時は、意外とそれを感じないものだ。
世界ではコロナに感染した人が既に今日現在で、8700万人、死者は190万人に上っているし、その家族などを含めれば何億という人たちがコロナという逆境に置かれ悲しんでいるが、それでも世界人口77億人の大半にとっては、コロナはまだ他人事でありその緊迫感はニュースなどで知ってはいても、今一つわが身のこととしては実感できていない。首都圏では明日から二度目の緊急事態宣言が出されるが、事ここに至ってしまったのは、やはり昨年の第一次の感染の波が下火となったことで国民にも緩みがでたことが大きいようにも思う。
逆風が少し弱まると微風が吹いていてもそれを感じないのと同じことが起こってしまい再び風が強まっても、どうせたいしたことはないだろうと侮ってしまって取り返しがつかなくなったのかも知れない。アメリカやヨーロッパ各国に比べれば感染者数、死者数ともに日本はまだ少ないとはいうものの、今、直面している問題の元凶は、やはり、逆風の後に安心してしまったことだろう。
そう考えると、コロナの発生源ながら、いち早くコロナ禍を脱したと豪語する中国が心配になって来る。14億の国民が、まもなく来る春節で大移動したら―――どうなるのだろうかとも思う。14億の人口の6割、すなわち8億人に中国製のワクチンを打つにしても一年や二年は優にかかるだろうし―――。
（01/07/21
10:00pm）
本日の「日々早々」に戻る
2021年上期の各月バックナンバー ：1月 2月 ３月 4月 5月 6月
金曜日シリーズ全目次 ←ここをクリック
「日々草々」全バックナンバーリンク表 ←ここをクリック